夏休み、3000枚の写真で作った心温まるオリジナルアニメ FCAファイナリストインタビュー #3
- 全国小中学生動画コンテスト

目次
FULMA株式会社の主催する、全国小中学生動画コンテスト FULMA Creator Awardsでは、小中学生クリエイターたちからの「好き」の詰まった作品を募集しています。
今回は、昨年度優秀賞受賞者の齊藤 馨さんに、作品を作ろうと思ったきっかけや、制作の裏話についてお聞きしました。
齊藤 馨さんの作品
作品タイトル:
イモデウス(太鼓の音楽会)
作品説明:
モーツァルトにあこがれる音楽好きのいも虫のイモデウスが、ライバルのトウガラシにうばわれた太鼓を取りもどすためにキッチンに行く物語です。最後に二人は和解し、太鼓の音楽会を開きます。
環境問題からコマ撮りにテーマ変更。いま好きなことをテーマに!
今回の作品を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
いきなりクレイアニメを見たい気分になった時があって、それで、ちょっと家にあったピングーのDVDを見たんですよ。そしたらいきなりなんかクレイアニメを作りたくなっちゃって笑
ちょうどその時に動画コンテストありますよっていうお知らせを聞いて、今回のコンテストでクレイアニメを応募しようかなって思いました。
※クレイアニメとは
クレイアニメは、クレイ・アニメーション(Clay animation)の略で、ストップモーション・アニメーションのうち、被写体を主に粘土を材料として作成しているものを指す。
※ストップモーション・アニメーションとは
静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かしカメラで撮影し、あたかもそれ自身が連続して動いているかのように見せる映画の撮影技術、技法。「コマ撮り」とも呼ばれる。
イモデウスのストーリーを思いついたきっかけを教えてください。
実は最初は環境問題について、「環境に気をつけましょう」みたいな動画を作ろうと思っていたんです。でもストーリーが思いつかなくて、テーマを変えたんですよ。環境に関してももちろん大事だとは思いますけど、なんかよく考えてみたら、今撮りたいテーマじゃなかったんですよね。
最初にイモデウスの物語を思いついた時は、今のストーリーとは若干違っていました。最初は、トウガラシに取られた太鼓を取り返すためにイモデウスが戦いに行って、トウガラシを完全に倒して、「よっしゃ!」ってなる設定だったんです。でもそしたらちょっとトウガラシがかわいそうだなと思ったのと、それだけで終わっちゃうと単純すぎて面白くないなと思って、お互いの気持ちを分かり合うっていうストーリーに変更しました。
▲イモデウスとトウガラシが和解するシーン
キャラクターの設定は、どんなきっかけで思いついたんですか。
主人公イモデウスが、何も特徴がないとつまらないなと思ったんです笑。だから何か特徴をいくつか作った方がいいかなと思って、まずは「モーツァルトに憧れてるからカツラをつけている」という設定を作りました。ほっぺが赤いところも特徴です。
参考にしたアニメはありますか?
ピングーとか、プチプチアニメとか、そういう系のものです。
最初はテレビとかで見ていて、かわいいなー、これどうやって撮ってるんだろうなって思ってて。しばらくしてから、これはコマ撮りアニメというものなんだということを知って、ちょっと面倒くさいなと思ったんですけど、まあそれはそれで楽しそうだなと思って、撮り始めました。
自分は元々動画を作るっていうのは趣味じゃなかったんですよ。コマ撮りを見てコマ撮りが好きになって、 自分でもコマ撮りを作ってみようかなと思って動画作りを始めました。でも(クレイアニメの)粘土のキャラクターって自分で作らなきゃいけないじゃないですか。それはちょっと大変だなと思って、最初の2年間ぐらいはレゴでキャラクターを作って撮ってました。
1ヶ月半で3000枚の写真を撮影!夏休みは動画制作に没頭!
ストーリーを考えついてから作品が完成するまで、どのくらいかかりましたか。
ストーリーは夏休み始まる前ぐらいにちょっとだけ考えついたんですよ。イモデウスっていうキャラクターを思いついたのが、夏休み始まる2週間ちょっと前かな。で、ストーリーを夏休みの1週間前ぐらいから考えて、夏休みに入って、1週間か2週間後ぐらいに撮り終えたから、撮影期間は1か月ぐらいなんですけど、編集とか全部含めると1ヶ月半ぐらいですかね。
撮影した写真は全部で3000枚くらいです。
シーンは前から順番に撮影していったんですか?
全部のシーンを順番に撮ってたんじゃなくて、シーンごとに分けて撮影してます。
最初に撮ったシーンは、(動画冒頭の)脅迫状みたいなシーンではなくて、「キッチンで車に乗ってて何かに突っ込んだシーン」です。その後に一番最初の脅迫状のシーンを撮って、そしてキッチンとかお玉とかが出てくるシーンを撮って、イモデウスがトウガラシに立ち向かうってシーンを撮ってから最後、みんなが拍手するシーンを撮ってました。
▲「キッチンで車に乗ってて何かに突っ込んだ」シーン
ストーリーは最初から決まっていたんですか?それとも撮影をしながら決めていったんですか?
最初の頃はストーリーを考えながら撮っていました。ただ、最後の方にはもうストーリーが全部できたので、ストーリーを考えながら撮影してたのは最初の1週間か2週間ぐらいです。
撮影で工夫したことはありますか?
撮り方については、少し工夫していました。
木のブロックのような物を粘着剤でスマホに貼り付けて、それをちょっとずつ動かして撮影していました。普段はちゃんとしたスタンド使ってるんですよ。でもあの時はスタンドがどこに行ったか分かんなくて笑
ちょっとどうしようって迷ってたら木のブロックがあったのを見つけて、使えるかもなって思って。
編集で工夫したことはありますか?
効果音選びは結構時間がかかりました。うるさすぎるとしつこいなって思われちゃうし、静かすぎてもちょっと寂しいなと思ったから、適度に入れました。効果音サイトから探したり、一部は作ったりしています。
動画の最初に、「イモデウス」って文字が出てくるじゃないですか。あの音は見つからなかったので、自分で作りました。GarageBandで木管楽器を探して、レコーディングしたのを保存して、それをLuma Fusionで読み込んでやったって感じです。きちんと「イ・モ・デ・ウ・ス」と(同じイントネーションで)聞こえるように工夫しました。
あとは、映像に合うような音楽選びとか。音楽もどれが合うとか結構頑張ってました。Dovaっていうフリーサイトからダウンロードしたものを使ってます。
▲「イモデウス」という文字がでる、動画冒頭のシーン
「面白さ」ってなんだろう?普通はありえないことを動画で表現
今回の作品の一番の推しポイントを教えてください。
少し地味なシーンなんですけど、イモデウスが、街に来てとある路地の角を曲がったあと、車がクラクションを鳴らして通ってくるじゃないですか。あのシーンが一番個人的には好きです。
▲齊藤さんの一番お気に入りの、右手から車が走ってくるシーン
車を登場させた理由について教えてください。
このまま終わっちゃっても、単調でつまらないなと思ったし、何か通ってる方が面白いかなってなりました。車が登場するだけで街っぽい感じが出るじゃないですか。地味なんですけど、キッチンに車が通るっていうのは面白いなって。理由になってるのかな笑、それだけです。
馨さんの考える、「面白い」という感覚についてぜひ教えてください。
すごい難しい笑。いやでも答えますよ、大丈夫です。
面白いの基準は、まずは一つは、背景のものが何かちょっと動いてるとか、でしょうか。日本の子ども向けアニメだと、中心となってるものは動いてるけど、背景にいる人とかは全然動かない。一番前にいる人物がずっと何か喋ってるとか、それだけじゃないですか。それだとちょっとつまらないなと思ったんですよ。(自分の作品では)背景とかあまり目立たないところも動いてた方がいいかなって。
で、もう一つは、キッチンに絶対ないものを置いてみたところです。キッチンって普通あんなミニカーとか絶対ないじゃないですか。でも、あのミニカーがあることで、キッチンなのに別の世界が広がっているような感じがあって。キッチンと全然関係ないものや、その場所にあるはずのないものとかを置いたりするのが、基準のもう一つかな。
自分の名前が呼ばれてびっくり!楽しんで作った作品を評価された喜び
優秀賞として名前を呼ばれたときの気持ちを教えてください。
10人のファイナリストに残っただけでもすごい驚いたんですよ。他の子の作品がみんな上手くて、敵わないかなとも思っていました。なので優秀賞で名前を呼ばれた時、びっくりしました笑。でも、自分で楽しんで作った動画が審査員の人達にも、評価してもらえたから、その時はうれしかったです。
賞金は何に使われたんですか?
賞金は、ちょっともったいないから使わないで、大事に引き出しにしまってます笑
やっぱりピン札っていうのもあるし、せっかく受賞したお金だから、記念に取っといてもいいかなということで。よっぽど大事なことがない限り使わないつもりです。
今年は、FCAに応募しますか?
まだ分かんないんですけど、参加したいです。
今中学生なんですよ。若干忙しくなっちゃうから、でもやっぱそうなると動画撮れる時間が少なくなっちゃうじゃないですか。ちょっと動画作るのが何か恋しくなるっていうか。作りたくなっちゃうから…何て言えばいいんだろうな、意気込みっていうのか分かんないんですけど、作れたらぜひ作りたいです。
ちなみに今年応募できたとしても、イモデウスシリーズを続けるかはまだ決まってません。
今年の応募者へ一言「集中して一つの事に打ち込んだ経験を」
今年の応募者の人に一言お願いします。
とにかく楽しんで、自分の作りたい作品を作って下さい。僕もそうだったんですけど、集中して一つの事に打ち込んだ経験は後から振り返って良い思い出になるんじゃないかなと思います。
齊藤さん、インタビューをお受けいただき、ありがとうございました!
表現したい作品に真摯に向き合い、自分の手で作り上げる喜びと楽しさが、しみじみと伝わってくるインタビューでした。
今後のご活躍も、心から楽しみにしています!
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また、今年のFCAは下記からエントリーできます。
ぜひ皆さんも自分の好きなものをテーマに動画制作にチャレンジしてみてください!
[エントリーはこちら]
https://fulma.com/awards/entry
みなさんの好きを詰め込んだ、素敵な作品と出会えることを、心より楽しみにしています!