ソニーがFULMAと共に大切にし続ける「子どもたちの感性」
- 全国小中学生動画コンテスト
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全国小中学生動画コンテスト 「FULMA Creator Awards」。今年で3回目の開催となるこのコンテストですが、昨年に引き続き、ソニー株式会社さんに協賛いただけることになりました。
今回は、デジタル一眼カメラ α™(Alpha™)、VLOGCAM™ シリーズといったカメラ製品の商品企画を担当されている西賀子さんにインタビュー。二人の男の子のお母さんでもある西さんに、「カメラと子育て」「子どもの感性の向き合い方」について、お話しいただきました。
ソニー(株) 共創戦略推進部門・イメージング商品企画1部1課・商品企画リーダー
2014年ソニー株式会社入社。入社後 ソニーマーケティング株式会社に転籍し、テレビ・オーディオ・カメラなどのコンシューマー向け製品の店舗営業や国内マーケティングを経験。
その後、2023年にソニー株式会社に転籍し2024年より現職。
私生活では、2人の子どもを育てる母。
「幸せを派生させるプロダクト」との出会い
FULMA齊藤:昨年に引き続き「FULMA Creator Awards」に協賛いただき、ありがとうございます!まずは、西さんがこれまでソニーで取り組まれてきたお仕事について、簡単にご紹介いただけますか。
ソニー西:カメラの商品企画として、デジタル一眼カメラαやVLOGCAMといったシリーズを担当しています。
新卒でソニーに入社したのですが、現職の商品企画に異動してきたのは2023年8月なんです。それまではソニーマーケティング株式会社で、コンシューマー向けソニー製品の日本国内営業・マーケティングを担当していました。
ソニーマーケティング株式会社では、カメラのみならずテレビやオーディオのカテゴリも担当しましたが、カメラに対する思い入れが強くなり現職にいたりました。
FULMA齊藤:なぜ特別カメラへの思い入れが強くなったのですか?
ソニー西:学生時代から友人や家族との思い出を写真や動画で残すことが好きだったのですが、仕事でカメラに関わる中であらためて自分がなぜカメラが好きなのかを考えました。
そのなかで、私はカメラが「幸せを派生させるプロダクト」だと考えているので特に思い入れが強いことに気付きました。
楽しい経験や幸せな瞬間を記録することで、大事な瞬間を残せる。そして、その経験を人と共有したり、一緒に過ごした友人や家族と「こんなことあったね」「なつかしいね」と一緒に見返したりできる。あるいは、自分自身が撮影者でなくても人の素敵な体験・経験も、写真や動画で追体験をさせてもらうことができる。
その連なりが、人々のあいだを写真や動画が派生して、写真や動画を通して笑顔や幸せが広がっていくように感じたことから、カメラは「幸せを派生させるプロダクト」だなと感じたんですよね。そういったきっかけもあり自分から希望して、いまはカメラにまつわる仕事に取り組んでいます。
FULMA齊藤:「カメラは、幸せを派生させるプロダクト」。素敵な言葉ですね。お子さんは、すでにカメラに触れていますか?
ソニー西:はい。7歳と5歳の子どもがいますが、キッズカメラを持たせています。去年、家族で海外旅行に行く機会があったんですが、子どもたちが何を見て、どう撮りたいと思うのか気になり、そこで自由に撮ってみてもらいました。旅行中は思ったよりも真剣に撮っていて、「それ撮るの?」と思うようなものも真剣に撮ったりしていて、そんな撮っている姿もとても印象に残っています。人に見せたら撮影に失敗したように思われるかもしれないまっくらな写真や、被写体がブレているような写真が多いですが、撮影している姿も含めて当時の情景が思い出されるので、我が家ではすべてボツにせずにアルバムにまとめて残し、部屋に飾っています(笑)。
商品企画チームを驚かせた「子どもたちの独創性」
FULMA齊藤:では、改めて、今回もソニーさんが協賛してくださった背景を教えていただけますか。
ソニー西:昨年に続き、未来を担う子どもたちのクリエイティビティ、創造力を応援したいという思いが、協賛を続けさせていただいた理由ですね。
FULMA齊藤:昨年協賛いただいた際、インタビューでお話を伺った高江遊さんが、「子どもだから特別にということではなく、ひとりのクリエイターとしてソニーは子どもたちを応援したい」とおっしゃっていました。
ソニー西:はい。その想いも全く変わっておりません。昨年度のコンテストの作品は、実はその後、商品企画のメンバーで会議室に集まって観させていただいたんです。その内容やクオリティーにメンバーみんなで驚きましたし、かつ得られるものが多かったです。
特に、子どもたちの独創性や着眼点に驚きました。子育てをしている私でも想像の及ばないレベルのものでしたね。そして子どもたちの作品を見て、私たち自身が仕事をしていくモチベーションにもなりました。子どもたちが動画制作という方法で自分たちを表現している姿を目の当たりにして感動したことも、協賛を継続した背景のひとつだと思います。
FULMA齊藤:ご覧になった作品のなかで、印象に残っているものはありますか?
ソニー西:どの作品も編集技術が高いことに驚いたのはもちろんですが、それよりも印象的だったのはみなさまの着眼点と独創性です。
たとえば、女の子とお兄ちゃんが部屋のなかで映画をつくっていた作品は特に印象に残っています。ストーリー構成やフレーミングはとても凝られていて、たくさんの動画や映像を参考にして勉強したのではないかと思ったのですが、ストーリーの着眼点やヘビに追いかけられているシーンの演出工夫など独自の視点や発想がたくさん盛り込まれていると感じました。
私自身もこれまでたくさんの作品に触れてきましたが、昨年度のコンテストで拝見した子どもたちの作品はそのどれにも似ていない。
オリジナリティがあふれる作品で子どもたちならではの感性に圧倒されました。
そして同時に、子どもたちのその感性を大事にしたい。と強く感じました。
動画は、そういった子どもたちの感性を形にして表現する手段にすぎませんが、表現方法を知ることで拡がる感性もあると考えています。
子どもたちの中に秘めるクリエイティビティを最大限に発揮できる方法を今後も考えていきたいと思いました。
FULMA齊藤:今年はすでに、昨年のコンテストの2倍に迫るようなペースでエントリーが集まっています。昨年の受賞作品を観たうえでそれを超えようと動画をつくる子どもたちもいますし、面白い作品が集まってくるのではないかと思っています。
ソニー西:また皆さんの作品を観られるのが楽しみですね!
FULMA齊藤:子どもたちは誰かに観てもらいたい、何かを伝えたい思いがあって、夏休みをかけてものすごいエネルギーを使って動画制作に取り組みます。ソニーでカメラをつくっている方々が動画を観てくれるということ自体が、子どもたちにとって大きなモチベーションになると思います!
カメラで保存される「子どもの感性」
FULMA齊藤:FULMAでは、ソニーさんのVLOGCAMを動画制作スクールの子どもたちに使ってもらう取り組みを、昨年からご一緒していますが、その意図をお伺いできますか。
ソニー西:最近はデジタル化が進み、子どもたちの意識も高まっています。カメラでの撮影や動画編集をするお子さんも増えています。 私たちとしては、表現したい想いを持つクリエイターとして子どもたちを応援したい。クリエイターに寄り添う存在でありたい。そういった想いからFULMAさん、そして子どもたちにとって少しでも力になれたらと想っています。
なかでもやはり、昨年取り組みをご一緒して気づかされたのは、子どもたちの年齢ならではの世界の見方や表現の仕方です。よくもわるくも、成長するに伴って失われていく感性はあると思いますが、それを大事にしたい。質問に答えながら子どもたちのことを考えると、目頭が熱くなってきますね(笑)。
FULMA齊藤:西さんは、子育ての中核に「写真」や「動画」の存在があるのですね。
ソニー西:はい、そうです。現役の保育士でありながらSNSの総フォロワー数が200万人を超える「てぃ先生」という方がいるのですが、あるときに動画で「子どもが楽しそうにしている様子を写真や動画で収めて、親子で一緒に振りかえることが子どものメンタルや自信にいい影響をあたえる」というお話をされていました。記録を残すことで過去の自分の良いイメージを持続しやすいので良いということですが、我が家では子どもたちが小さい頃から、写真をお部屋に飾ったり、楽しかった思い出の写真や動画をテレビやプロジェクターで見せたりしてきました。この先どうなるかは分からないですが、今のところ子どもたちも嬉しそうに見てくれたり、「昔の動画を流して」とリクエストをしてくれたり喜んでいる様子です。
また、大人がとった写真や動画だけでなく、我が家では子どもたちが描いた絵、廃材で作った作品や子どもたちが撮った写真も飾っています。有形のものをずっと取っておくのはスペース的に難しいですが(笑)、先にもお話しした年々変わっていく子どもたちの感性という点もふまえて、残せるものは残していきたいと思っています。
FULMA齊藤:成長して知識がつくことでつくれる作品がある一方で、そのときの感性でしか出せないアウトプットがあるということですね。そういった考え方で子どもの撮る写真やつくる動画を捉えているのは、自分にとって新しい視点でとても勉強になります。
ソニー西:アニメーションでもいいですし、つくった本人が映っていなくても、その時の自分が何を考えて表現したかという感性が残るのはいいことだなと思います。そうした観点でも、FULMAさんの活動は素晴らしいと感じています。
自分の宇宙へ、ひとりで行く
ソニー西:今回のインタビューを受けるにあたって動画制作についてあらためて考えたのですが、皆さん、時間やシーンの流れや音など、とても考えながら撮影や編集をすると思います。それを一度経験すると、世の中の見え方が少し変わると思っていて。
普段の生活のなかでテレビや動画を観ていても、一度映像制作を経験していたら「BGMをこう変えたら雰囲気が変わりそうだな」「このシーンはこういう角度で撮ったのかな」と思いを巡らせることができますし、世界の見え方が広がると感じています。カメラを使って撮影するのに限らず、動画制作は子どもが多角的な視点を身につけたり、表現力を高めたりするのに、とてもいい手法だと思いますね。
FULMA齊藤:「FULMA Creator Awards」は、作品の募集にあたって、あえてテーマを設定していません。実写作品とアニメーション作品をひと括りに審査したりと、そのプロセスはとても大変なのですが、「子どもクリエイターの思い、やりたいことを動画で表現してほしい」というメッセージを込めてコンテストを開催しています。
普段から動画をつくっている子どものなかには、つくって終わりという子もいるのですが、さらに自分の伝えたいことが相手に伝わるか、チャレンジしようという子どもたちがコンテストに参加してくれています。昨年のコンテストの応募作品には「いまは伝わり切らないけど、来年になったら1歩成長しているかな」と思わせてくれる動画も多くあったので、今年も心を打たれるような作品が集まっているのではないかと思いますね。
FULMAの子ども向け動画制作講座で使用している「企画シート」
ソニー西:子どもたちの思いを大事にする方針はとても良いですね。FULMAさんが動画制作スクールで子どもたちに教える際、作り手が伝えたいことを、動画を観る人に伝えやすくするため、意識していることはありますか?
FULMA齊藤:FULMAの講座では、自分がつくりたい動画をつくれるようになることをゴールに設定しています。そのうえでさらにがんばりたいと思っている子どもたちに向けて、「企画シート」を先生と一緒に書きながら作品に落とし込んでいくというステップを用意しています。誰にどんな思いになってもらいたいのか、どうやって伝えたいことを工夫して伝えるかといった内容を、そのシートに書き込むんです。
FULMAは、「子どもたちのやりたい!をカタチに」をミッションとして掲げています。子どもがやりたいことを実現できるようにサポートしながら、そのなかで「FULMA Creator Awards」への参加など、本人の成長の機会にしてもらえたらと考えています。
そのためスクールの受講生には、必ずしも動画を見せることが最終目的ではなく、むしろご家族や先生に見せたくないという子どももいるんです。ただ、動画をつくりたいという気持ちは事実としてあるので、それを尊重しながら、一人ひとりの個性に合わせて動画制作を教えています。
ソニー西:なるほど。先ほど、私は写真や動画を「幸せの派生」とお話しましたが、動画制作においては逆に「内省の手法」としての可能性があるのですね。新しい気づきで、とても面白いです。
FULMA齊藤:「動画を見せたい」「YouTubeに投稿してチャンネル登録者数を増やしたい」と、広がりを生みたいと考えている子ももちろんいますし、逆に自分だけの世界を広げたい、例えると宇宙にひとりで行っているような子もいます。そのどちらにも介在できるのが、カメラというプロダクトなんだなと感じますね。
ソニー西:そうですね。
FULMA齊藤:昨年、高江さんが「子どもたちにプロのカメラマンが使うような高性能のカメラを使ってもらうのもいいのではないか」と話していたんです。撮影で表現できる世界がプロダクトによって拡張されるので、とんでもない才能を開花させる子どもが現れる可能性があるのではないかと。
ソニー西:私もそう思います。良い機材を使うことで表現の世界が広がると私も感じます。子どもたちにも、気軽に表現の幅を広げてもらえたらいいなと思いますね。
FULMA齊藤:最後に子どもクリエイターに向けて、応援のメッセージをいただけますか。
ソニー西:無限大の可能性を持つみなさまの独創性と着眼点にあふれた動画、私自身また新しい発見に出会えることを楽しみにしています。過去の作品から学ぶべきところは学びながら、しっかりと自分の個性が出る動画をつくってもらえたらと思います。
<締め>FULMA齊藤の取材後記
幸せを派生させるプロダクトと今だから作れる作品
今回はソニーの西さんと対談させていただきました。西さんはお子さんが撮影した写真をアルバムに残しており、時々お子さんがアルバムを持ち出してきて西さんに見せてくるそうです。写真が思い出を残し、コミュニケーションのきっかけになる、幸せを派生させるプロダクトがカメラ、まさにその通りだと思いました。
また子ども自身が撮影した写真や映像は、その時の感性が反映されていて、知識や技術を超えた素晴らしさがある点についても非常に共感し、今回のコンテストが今時点の完成を残す役割もあるのではないかと考えさせられました。
いまだからこそ作れる素晴らしい作品が集まることを楽しみにしています。
この度はインタビューにご協力いただきありがとうございました!